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ニコルはナイフを自分の首筋まで持ってきたが、そこで彼は手をもとにもどした。
やはり、だめだ。こんなところで死んだら。
そうだ、彼のところへ行こう。彼ならきっとやってくれる。復讐を。マリーの……。
あたりの暗さも和らぎ、くすぶっていた炎も完全に消えたようだった。
ニコルはナイフを懐にしまい、彼女を抱いたまま立ち上がった。
改めて感じたあまりにも軽い彼女の体重で、死の重みを深く受け止めてしまう。
燃やされたであろう車の残骸の横を通り、少しばかりの緑がある小さな公園に入り、落ち葉のベッドの上に彼女を横たえた。
「ごめんよ、マリー。君を守れなくて。きっと、きっと復讐を果たすから」
ニコルは聞こえるか聞こえないかわからないくらいの声でささやいた。
そして、もう一度彼女に接吻をした。
その唇が離れると、そこには寒い風が寂しく吹くだけだった。
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