Macrame

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移動教室が終わり、親友のリクと相変わらずの会話を交す しかし、教室へ戻った途端、違和感があった 「………あれ?」 何かがおかしい 【アレ】が、ない しかし、リクは気付く様子もなく「どうした、ライト。今頃になって二日酔いかー?」などと言っている この違和感がリクの言う通り、二日酔いのせいだったらどれだけよかっただろうか…… 「……本がない」 「はぁ?」 「赤いブックカバーの…本が……」 見てないか?と親友に目をやると、 「ああ、お前がいつも持ち歩いてた本か」 思い出してはくれたらしいが、見掛けてはいない様子だ 赤いブックカバーの本 俺の愛読書 【天使の柱考察】… どこかにしまった覚えはないのだが、どこにいったのだろう 「なぁ、リク――」 再度、問掛けると 「お前がわかんないのに俺がわかるわけあるか」 と正論を返される 確かにそうだ 「それに、あんな異国語だらけの本、すっげー物好きじゃなきゃ持っていかねーよ」 「……」 「とにかく、この教室に出入りしてる人間が持っていくとは思えねぇな」 「……だよな」 俺はがっくりと肩を落とす そんな俺にリクは、きっとお前の覚え違いだって、と言い 「寮にでも帰って部屋を探した方がいいと思うぜ、俺はな」 と、付け足した。 その言葉に俺は頷いて、まぁすぐに見付かるだろう、と、教室を出たのだ 誰もいない教室 誰もいないはずの教室 闇色がゆらゆらと揺れているのにも気付かずに
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