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闇色が中庭に出ると、優等生然とした青年が立っていた
「やぁ、待たせたね」
闇色が声をかける
発せられた声から、闇色が男なのだとわかった
声をかけられた青年は、私も今来たところですので…と、眼鏡の位置をなおしながら闇色の持つ本に視線を落とす
「マクラメ様、…その本は?」
赤いブックカバー
嫌でも目についてしまう
青年の問いにマクラメと呼ばれた闇色はさっき拾ったんだ、と、楽しそうに笑いながら答える
「【天使の柱考察】…こんなものを信じているヤツ、まだいたんだね。
可愛らしいものだ。
ああ、君も信じている一人だったかな?マクロ」
「今の世の中で『天使の柱』を信じていない人など少ないですよ」
そうかな、と笑うマクラメ
そうですよ、と答えるマクロ
偽善、ギマン、差別、不平等……人間のありとあらゆる負の感情があふれる今の世の中で、神の許しと救いを求めるものは少なくない
と、マクロは考えている
(まあそれは、その者がどれだけの罪を背負っているかにもよりますが……)
「この本の持ち主は、どれだけの闇を抱えていると思う?」
心の中を読まれ、マクロはギクリとする
自分の主人はどこまで自分の考えを読んでいるのだろうか、と
ただ、マクラメの顔を見ることは出来ず、彼の抱えている(というよりは持て遊んでいるに近い)本を見つめる
――と、あることに気が付いた
「それ…もしかしたら、私のところの寮生のものかもしれません」
「君のところの……?」
興味を示したようなマクラメの微かな反応に、興味あるんですか、と問うと少しだけね、と返答があった
「その生徒、名前はなんていうの?」
「ライト・クリステルといいます」
光。
または、全てを正しき道へ導く者。
「ふふっ、やっぱり興味あるね」
眩しい光の内側…
もしかしたらそこには
本当は目の前も見えないほどの暗闇が潜んでいたりするかもしれないのだから
「マクラメ様」
微笑していると、名を呼ばれる
振り返るとそこには不安そうな表情の眷属(けんぞく)がいた
「何だい」
「アナタが私の前に初めて現れた、あの時の言葉は……嘘・偽りのない、真実のものですよね……?」
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