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何が言いたいのか
眉をしかめる
彼の言いたい意味が自分には全くわからない
どういう意味、と視線を向けると、マクロは言った
最近とても不安なのだ、と
「不思議な…夢を見るものですから……」
「夢?」
聞くと、白い服の少年が現れ、夏の青空に真っ白な雪を降らせるのだという
「ただ、それだけの夢なのですが…」
「………夏の、空に?」
「マクラメ様?」
見れば闇色の男は珍しく考えこんでしまっている
不安になり、声をかけた時だった
額に手をそえられる
「君の夢の記憶、少しだけ拝見させてもらうよ」
クスリ、と微笑むことすらせず、赤い瞳がマクロの意識を飲み込む
マクロの見た夢の世界
そこは白一色に染められていて、周囲を見渡すものの、何もない
(こんなことをするのは――)
何も見えない白い世界を睨みつけていると、真っ白な少年が現れ、マクラメを見つめる
その瞳もまた紅だった
「100%の確率で起こる事象などこの世には存在しない」
少年はマクラメの存在など無視して語り始める
実際、ここはマクロの記憶の世界なのだから、少年にマクラメの姿は見えていないのだから当たり前なのだが
少年は続ける
「例えば真夏に雪が降ることもあるように、例えば真冬に薔薇が咲き誇るように。全ては『絶対的な支配』のもとではない」
少年はまるで演説でもしているかのように語り続ける
吹雪が起こり、その中に深紅の薔薇花弁が混じっていたが、少年もマクラメも気にする様子は全くない
むしろ少年は楽しそうにすら見える
「僕は忠告をする」
突然、声色が変わった
「全ての命ある生き物たちに助言をする
『天使の柱』を探しなさい
そして、神に自らの犯した罪の全てを償うんだ
そうすれば…――」
――そうすればきっと、道は開けて君は救われることになる…――
その言葉を最後に少年は薔薇花弁の混じった吹雪きに包まれて消え、マクラメも元の世界へと戻ってきていた
目の前にはマクロが何が起きたのかわからない、といった表情で立ち尽くしている
しかしマクラメは気にもせず、ぐにゃりと姿を歪めて近くの影に溶けていった
赤い本も一緒に
完全に置いてきぼりをくらったマクロであったが、いつものことか、と溜め息を吐き、チャイムが鳴ると抱えていたレポートや教科書を抱え直して次の講義へ向かうべく中庭を抜けた
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