第二章

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愛藍は席を立ち政士の元で「そろそろ帰るよ」と声をかける。政士は母親の横に立ち茱梨に「またね」と手を振った。   「では王女様、満足な話も何一つ出来ず」   母親が話している間、政士はずっと寂しそうに座っている茱梨を見ていた。   「…茱梨」   娘を優しく抱き締める。   「血は争えない…いずれあなたも、政士君も…」   「おかあさん…?」   「……ごめんなさい、帰りましょう」   「うんっ!」   いずれきっと茱梨も分かること── 辛い思いはしてほしくない。       王女の計らいで、それから茱梨と政士は週に一度は会うことになっていた。 そうしている内に五年が経ったある日、茱梨が8歳になった頃世代は現・国王へと引き継がれた。   めでたい式だけあって国民のほとんどが首都に集まり、いつもより更に賑わっている。     「王家は酷い」   黒く堅苦しい服を着させられ、首元をしきりに気にする政士はそう口にした。   「同時に騎士の任命式をやるなんて聞いてなかったよ」   「仕方ないじゃない…あなたが2歳の時に既にやったんだから、王家の方も急遽決めたそうよ」       数日前──政士は愛藍と共に城に呼び出された。   「ただいま参りました」
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