第二章

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《3》   「政士っ遅かったじゃない!」   式の一時間前、城へ訪れた政士を待っていたのは待ちくたびれた様子で立っていた茱梨だった。   「王女様、おめでとうございます」   微笑して祝辞の言葉を言い、茱梨の華やかなドレスを見て政士はふと口を開いた。   「まるで結婚式のようですね」   衣装が、だが。   「なっ…」   驚き少し赤らんだ様子で政士を見る茱梨の目を見て、「冗談ですよ」とドレスに付いた小さな埃を叩く。   「お似合いです」   「…ありがとう」       「桐生政士、そなたを王女・筐宮茱梨を護る盾、騎士として任命する」   「はい!」   真っ直ぐで、淀みのない澄んだ碧眼。 誰かが口を開いた。   「女王様の護衛にあたってた、あの騎士の男にソックリだねえ」   「二人目の息子らしいよ~。嫌ね~、また父親と同じことを繰り返すんじゃ…」   ヒソヒソと噂話まで立つも、「静粛に」という王の一言で場は一気に静まり返ってしまう。 マイクから離れ政士の脇を通る際、国王は小さく言葉を発した。   「政士君。後程再び謁見の間へ来てくれるか。君の母親も同席してもらえると有り難い」   「?はい」
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