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《1》
美しい海に面したフリィ王国は、昔から争いのない豊かな国として栄えてきた。
古代先人が築き上げた礎は現代まで受け継がれ、その数々の歴史的建築物も各地で見ることが出来、観光地としても有名である。
しかしそんな栄える王国である一方、とある問題を抱えていた──
「お見合い?お断りだわっ」
分かっていたが、茶髪の彼女は毎度同じ反応ばかり。
呆れたように溜め息を吐く。
「姫様。あなたも今年で早18歳です。そろそろご結婚の相手を決めなくてはならないのは、十分承知でしょう」
「私は結婚なんてしません」
高価な布地であしらったワンピースを着た彼女はつんとした口調で繰り返すばかりだった。
彼女こそフリィ王国現・王女の筺宮茱梨である。
「あなたの我儘はいつまで続くのですか?」
後ろをついてくる彼は、呆れたような冷たい一定の口調で「全く」と呟いた。
しかしそんな彼の言葉に聞く耳持たず、茱梨は口を開いた。
「政士、今日は街の視察でしょう。早くしなさい」
「かしこまりました」
政士──そう呼ばれた彼は深々と丁寧に頭を下げるとその場から離れ何処かへ行ってしまった。
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