最終章

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王女の私室に来るのは今回で何度目だろう。 扉の前に立つと、時間を追うごとに心臓の鼓動が速くなる。   「姫様…」   あまり声が出なかった。 余程緊張してしまったのか、ノックをする手も微妙に強張っている。   「姫様、開けて下さい」   暫くコールしていると、中から静かに顔が覗いた。   「…」   瞼がむくんでいる。その目が政士を捉えると、驚いたように見開き扉を開け茱梨が彼の首に腕を回し抱きついた。   「政士っ…!」   早速ぐずる茱梨の背中に手を回し、ポンポンと優しく叩きながら政士が「ただいま帰りました」と呟いた。 ──今までずっと、泣いていたのかもしれない。     「話…?」   茱梨が落ち着いた後、紅茶に口をつけながら政士が話し始める。   「あなたは、私が義兄だと知ってどう思いましたか?」   茱梨は「どうしてそんなこと聞くの?」と質問返しをして紅茶を一口飲んだ。   「この後の話に大きく関係するので参考までに」   ティーカップを置く。   「私は、母上と同じように騎士であるあなたに恋心を抱いてた。義兄だと知って、ショックだった」   恋心を抱いてた──そう聞いた政士は若干照れたが、それを隠すように咳払いをして「そうですか」と言葉を発した。
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