78人が本棚に入れています
本棚に追加
王女の私室に来るのは今回で何度目だろう。
扉の前に立つと、時間を追うごとに心臓の鼓動が速くなる。
「姫様…」
あまり声が出なかった。
余程緊張してしまったのか、ノックをする手も微妙に強張っている。
「姫様、開けて下さい」
暫くコールしていると、中から静かに顔が覗いた。
「…」
瞼がむくんでいる。その目が政士を捉えると、驚いたように見開き扉を開け茱梨が彼の首に腕を回し抱きついた。
「政士っ…!」
早速ぐずる茱梨の背中に手を回し、ポンポンと優しく叩きながら政士が「ただいま帰りました」と呟いた。
──今までずっと、泣いていたのかもしれない。
「話…?」
茱梨が落ち着いた後、紅茶に口をつけながら政士が話し始める。
「あなたは、私が義兄だと知ってどう思いましたか?」
茱梨は「どうしてそんなこと聞くの?」と質問返しをして紅茶を一口飲んだ。
「この後の話に大きく関係するので参考までに」
ティーカップを置く。
「私は、母上と同じように騎士であるあなたに恋心を抱いてた。義兄だと知って、ショックだった」
恋心を抱いてた──そう聞いた政士は若干照れたが、それを隠すように咳払いをして「そうですか」と言葉を発した。
最初のコメントを投稿しよう!