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「…」
沈黙が訪れる。
話を切り出さなければならないと分かっていても、政士の口は緊張と不安のあまり紅茶を欲すばかりだった。
「話って、何?」
茱梨が聞く。
政士は唾を飲んだ後意を決して話し始めた。
「まず結論から申し上げます。私が、この王家に養子として入ることが決定しました」
「養子って…ということは、本当に政士は私の兄に…」
「そうなりますね」
政士はまた紅茶を飲む。
茱梨は黙り込んでしまった。
これ以上躊躇する訳にもいかない。そう感じた政士は、ティーカップを置きこれまでの話を簡潔に話し始めた。
「こうして、私は養子としての道を選びました」
聞き終わって茱梨はある疑問を抱き片手を上げて政士に質問する。
「でもどうして養子に?罪を犯すと疑っているのなら、例え養子にしても…」
紅茶を飲み終わった政士が紅茶を注ぎ足しながら溜め息を吐く。
「国王様には深い考えなどありませんよ。罪を犯しても尚騎士として国家に誠意を示し、姫様の気持ちをいかに理解出来るか…それを試す為にわざわざ『養子』という話を持ち出したんです」
茱梨が紅茶を飲み干し注ぐ。
「『養子』という条件はあまりに重すぎる。その選択をしてまで姫様を大事に思っているかの、言わば試験だったんですよ」
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