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「政士は、それでよかったの…?」
家を抜けてまで養子に来る政士の気持ちを思い、茱梨がそう口を開いた。
「姫様は喜ばしくないですか?」
茱梨は答えない。
政士は茱梨の顔を見てから、目線を手元のティーカップに移し再度口を開く。
「母にも相談しました。なかなか決断出来ない私に、母は『守りたい人の傍にいれる、それが一番の幸せ』…そう言いました。その言葉が私を後押しした」
「政士…」
「あなたの気持ちだけを考えて行動出来るほど、私も出来た人間ではありません。私は、私の幸せのままに決意したまでです」
ずっと傍に──
「前から気になってたの…政士は、どうして傍にいてくれるの?」
「愚問ですね」
彼は優しく茱梨の手を取ると、手の甲に口付けを施し彼女を見つめた。
「言ったでしょう?私は出来た人間じゃない…ただ私がお傍にいたいから、ですよ」
政士が微笑する。
今日も明るい太陽が輝いていた。
檻の中の狼
あなたの傍にいれない檻の中の苦しみよりも、あなたと一生を過ごす幸せの中の苦しみを選んだ。
狼は今、王家という檻の中。
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