78人が本棚に入れています
本棚に追加
「全くと言いたいのはこっちだわっ!」
私室に入るなり茱梨はクローゼットの中から取り出した服を掴み、ベッドに叩き付ける。
「私は…」
結婚なんてしたくない。
それを幾度となく言っているのにも関わらず、見合いの話は後を絶たない。
「こんな地位、辞めたいのに」
この国にも、少なからずとも貧困で苦しんでいる人々がいるに違いない。
こんなことを言える内が華。
王女として、次代の国を担う人間として
我儘を言ってはいられない。
でも──
「政士…」
あなたは、私の結婚に賛成?
見ず知らずの金持ちと結婚することが幸せだと、本当に思っているの?
(聞けたら、どれ程楽かしら)
幼い頃交した約束は、
もう叶うこともないのに
今にしたら煩わしいこの感情が消えることはない。
感情を捨て切れたらどれだけ楽か──茱梨はずっと考えていた。
しかし、辿り着く答えはいつも同じ。
(感情なんて、捨て切れない)
幾度となく繰り返した結論がこれだった。
最初のコメントを投稿しよう!