第一章

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「全くと言いたいのはこっちだわっ!」   私室に入るなり茱梨はクローゼットの中から取り出した服を掴み、ベッドに叩き付ける。   「私は…」   結婚なんてしたくない。 それを幾度となく言っているのにも関わらず、見合いの話は後を絶たない。   「こんな地位、辞めたいのに」   この国にも、少なからずとも貧困で苦しんでいる人々がいるに違いない。 こんなことを言える内が華。   王女として、次代の国を担う人間として 我儘を言ってはいられない。 でも──   「政士…」   あなたは、私の結婚に賛成?   見ず知らずの金持ちと結婚することが幸せだと、本当に思っているの?   (聞けたら、どれ程楽かしら)   幼い頃交した約束は、 もう叶うこともないのに 今にしたら煩わしいこの感情が消えることはない。   感情を捨て切れたらどれだけ楽か──茱梨はずっと考えていた。   しかし、辿り着く答えはいつも同じ。   (感情なんて、捨て切れない)   幾度となく繰り返した結論がこれだった。
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