第一章

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久々に視察に訪れた街は、王女が来ているというのに全く変わらない様子で流れている。 やはり一般人の様な服装の為だろう。   視察は既に王女に任され、この時だけが政士と茱梨が城の監視から抜け出せる機会なのだ。   「政士!この花綺麗じゃない?」   茱梨が花屋の前で白い花を指差してそう言った。 しかし政士は特に答えようとはせず、口調が変わることなくこう言った。   「姫様。我々は買い物をしに来た訳ではないのですよ」   「むっ…分かってるわよ」   それからぶつぶつ言っている茱梨の横で、「この花を下さい」と声が聞こえた。   「政士?」   「仕方のない人ですね」   政士が花代を支払った後、それを渡された茱梨はわざと喜びの感情を出さぬように口を開く。   「何で政士が払うの」   「公費で出して頂けるのであれば出して下さい」   出せないでしょう、と付け加えた政士の横で、茱梨は嬉しさで笑みを溢した。
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