旅立たず

2/2
前へ
/33ページ
次へ
母 「起きなさい 起きなさい もう朝よ」   「まったく… 仕事もしなけりゃ 手伝いもしないのね」   「何の為に生きてるの? 死ぬ為に生きてるんじゃないかしら」         そんな憎まれ口を言いつつも僕の世話をしてくれた母はもういない   唯一の肉親を失ってしまった しかし不思議と悲しくはない それよりも   誰が食事を作るのか 誰が生計を立てるのか   それが恐ろしかった 貯金も尽きた   家賃も払えない 僕は家を出る決意をした   ※主人公の名前を決めかねて下さい           太陽が眩しい 外に出たのはいつぶりだろう…   僕は中2の夏以来学校に行かなくなり 冬には外に出なくなった   記憶にあるのは夜中にベランダに出たくらいだろうか…? いつの話かはわからない   おかげで僕のレベルは1のままだ   いや ほとんどの町民はレベル1だ   町の外のモンスターはレベルが高すぎる 装備のステータス補助が敵の強さに追い付かない   モンスターは町の中に入ってこない なぜかは謎だがそのおかげで皆のうのうと生きていられる         だけど もうこの町にはいられない  頼るべき肉親も友達もいない     僕には絶望しか残されていなかった これからどう過ごそう 仕事をするのか?   無理だ 引きこもりニートの僕にそんな事が出来るはずがない   そもそも社交性が皆無なのだから この町で生きる力などない     なら初期装備のまま旅に出るか?   もっと無理だ エンカウントした瞬間先制1ターンで全滅終了だ   なんで最初の村に生まれなかったんだ   魔王の城が近いのがいけないんだ       親が死んだ時に僕の運命も決まったのだ   いや 始めから決まっていた   旅に出られない 仕事もしたくない   しかし 自殺する勇気もない     ただ生きているだけだ まだ生きているだけ
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加