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家を失って
3日が過ぎた
僕はまだ生きている
人は水だけでも少しは生きていけるらしい
家を出る決意をしたが
現状はただの浮浪者だ
誰も使っていないであろう井戸を見つけた
屋根がある
それだけの理由でそこで3日間過ごしてきた
意識は朦朧としているが
それでもどこか奥の方でハッキリとしている
常に空腹と吐き気が襲う
何も出なくても吐き気はするものなのだと知った
前までは常に満腹だった
その時は今の状況は想像もつかなかっただろう
今の僕にとって勇者とは食物をくれる人の事だ
魔王がいなくなったところでこの空腹感はなくならない
旅に出ずとも
自殺せずとも
僕は死ぬ
人に生まれたからにはいつかは死ぬが
僕は確実に死のヴィジョンが見えている
ゆるやかに
しかし他人に比べれば急速に
死に向かっている実感がある
誰も使わない井戸の横で果てた僕を見つける人は現れるだろうか?
現れなくていい
せめて骨になるまでは
…僕の意識はそこで途絶えた
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