未だ旅立たず

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夢を見た   変な夢だった   夢を見た気はするがどんな夢だったか覚えていない   目が覚めた時は何故かベッドの中にいた   理解できなかった   ここはどこだ? 僕は死んだのか?   まだ空腹感が残っている   生きているのだと確信した     だが現状が理解できない   僕はニートで浮浪者で井戸の横に住んでいたハズだ   ベッドで寝ている訳がない   しかし夢じゃない 死んでもいない   見知らぬ老人がやってきた     老人 「やっと起きたか しかしたまげたわい 井戸にアレを捨てようとしたら人がいるじゃないか」   『アレ』?気になったが敢えて言及しなかった する気も起きない 老人の話に耳を傾けるので精一杯だ     老人 「お腹は空いているかな? 一応と思って用意したんだが…」   僕の目の色が変わるのを見て老人は笑った   僕は久しぶりの食事にありつく   老人が何か喋っているが聞こえない 夢中で食べ続けた   しばらくは病人のフリをしよう この家に寄生しよう   井戸で死にかけている人間を助けるようなお人好しだ   どうにでもなる           老人は独り身らしく 井戸の近くの小さな家に住んでいる あの時は気付かなかった   改めて見ると井戸のスグ近くじゃないか   自分の視野の狭さに絶望しそうになった   僕は喋れないフリをした   他人と擬似家族なんて耐えられない   病人と世話をしてくれる老人   これが限界だ   この奇妙な関係が2週間程したころだろうか?   老人の留守中 僕は老人の部屋の鍵が開いている事に気付いた   普段は鍵がかかっていたし もし普段から開いていたら逆に興味を示さなかっただろう   しかし今日に限って開いている   見たくなった   そして驚愕した     人の死体だ それも1体ではない   まともな形をしている物はない   何故今まで血の臭いに気付かなかった 何故今はこうもハッキリとこの異臭に気付く   老人の食事しているところを見たことがなかったが 一目で 一瞬で理解できた   僕の食事に使われた肉は違ったはずだ 老人が僕の食事を作っているのを見た事がある   そこだけが安心できた   この家にいてはいけない スグに逃げなければ…     …老人が帰ってきた
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