ようやく旅立つ

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僕は老人の部屋に置いてある斧を手に取り死角に周り込む   部屋の中を見たことが知られれば僕の命はないだろう   なら逆に僕が殺したとしてもしかたない   そう言い聞かせた     老人が駆け足になったのがわかった   それもそうだろう 玄関から空のベッドも 開け放たれた部屋の扉も見えるのだから   額が汗に濡れる   斧を持つ手に力が入る   老人が入ってきた   渾身のフルスイング       僕は人を殺してしまった   そう思った   しかし老人は人ではなかった   その可能性は考えていた   老人はモンスターだった   見たこともない化け物に姿を変えた   もちろん既に死んでいるが   そして僕に変化が起きた     レベルが上がったのだ     凄い!力がみなぎる!   …でもなかった ほんの少し強くなった気がしただけだ   どうやら ニートというジョブは ステータス補正値 ステータス成長率 が低いらしい   老人は意外にも金を持っていた   僕は彼らの死体を井戸に捨てた   かつて老人がそうしていたように   僕は老人から手に入れた金で装備を整え町を後にしたのだった   昼はエンカウントしないように歩き   夜はモンスターの寝込みを襲って確実に殺せる一撃を見舞った コツは知っている 頭か喉だ     もともとレベルが低いからおもしろいように上がっていく   これで強くなれれば文句ないのだが 僕の強さはレベル1とあまり変わらない   僕の戦闘スタイルは変わらない   確実に 倒せそうな奴を 一撃で     こっちはジャブでも一発もらえば死んでしまう 当然の戦略だ   しかし意外だったのは慎重に動けば戦闘を回避できるし 急所を突けばこちらの力でも殺せるということ   誰も知らなかったのはある意味で当然だ   幼い頃から モンスターにあったらすなわち死亡 そう教わってきたからだ   だから殺す瞬間は今でも恐ろしい こんな土地にいては生きた心地がしない     目指すは最初の村   敵が弱ければそいつらを殺して肉を食べ毛皮を売り生活ができる     夢が広がる
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