序章-噂-

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生きてやり過ごす方法は、たった一つ。その人の望む答えを出すこと。それ以外に方法は存在しないのだ。 だが肝心の答えが何か、知る者は誰一人としていない。 その人の望む答えを出せた者が、いないからである。 その人の正体とは――目撃した者の話では、十代前半の少年だという事らしい。しかし彼が醸し出す雰囲気は、少年とはとても思えない程冷めており、目つきも年不相応だと言いたくなる程冷たいものだそうだ。 彼の胸の内には、一体何が隠されているのだろうか? 彼は一体、何を思って道行く人々に問いかけを続けているのだろうか? それは、彼自身にしか知り得ない。 今日も彼は闇夜に紛れ、その姿を現す。まるで彼の心に潜む深い深い闇を示すかのような、漆黒のコートを身に纏って。
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