探求

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少年は男と至近距離だと言えるくらい近い位置まで歩いていくと、足を止める。 そして、少年は口を開いた。少年とは思えない冷めた口調だった。 「……やっと見つけた標的(ターゲット)が、こんな奴だったとはね。酒を始めとした嗜好(しこう)品に溺れ、依存する落ちぶれた中年に尋ねるのはいささか屈辱的だけど、この際誰でもいい。君に一つ問おう」 難易度の高い言葉の羅列は、酒によってハイになった男の頭を更にハイにさせる要因となる。 男は混乱した頭を懸命に回転させ、少年に尋ねた。 「なんだあ? 難しいのは駄目だぞー」 少年は薄く笑う。 男はそれに気付かない。 少年が先程さりげなく男を侮辱していた事にも気付かなかったのだから、当然と言える結果なのかもしれない。 少年は先程と同様、冷めた口調で尋ねる。そう。『あの』質問を。 どこか遠くで梟(ふくろう)が鳴いていたが、少年にも、勿論男にとってもそれは夜の風物詩の一つでしかない。国語的に言うと、修飾語みたいなものだ。 関心など、皆無に等しい。
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