探求

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「一つ質問をしよう。君にとって一番怖いものは――何?」 二人の間に沈黙が走る。男は、梟の鳴き声がさっきより近く聞こえたような感覚に陥った。 だが男はすぐにへらへらと笑い出し、やがて豪快に――酒によるものか、そうでないかは定かでないが――笑うと少年の質問に答える。 少年はそれを無表情で見守る。反面、まるで期待していない様にも見えた。 「怖いものって、そりゃあうちの女房だな。午前様だとこれでもかってぐれぇ怒鳴るし、その時の顔と言ったらもう――」 「やはり僕が馬鹿だった」 男の言葉を遮り、少年は冷たく且つ語気を強めて言った。その様子からは強い怒りと呆れ、後悔が見て取れる。 通りには相変わらず誰もいない。ただ、冷たい夜風が吹くだけだ。 少年はコートからナイフを取り出すと、それを男の目前に運びつつ言った。 「君は僕の望む答えを出さなかった。だから、死んで貰う」 「何言っ――」 男に反論させる隙を与える事なく、少年はナイフを振るう。その刃先は男の首筋を捉え、真紅の鮮血を噴出させた。
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