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鮮血は、黒い路上を彩る。まるで、飛沫したペンキのように。点々と、時に広範囲に。噴き出した。
鮮血が降りかかる。路上のみならず、少年にも。
少年はそれに動じない。
男が悲鳴を上げて倒れて行くのを、やはり無表情で見つめているだけだ。
そしてそのまま立ち尽くすのかと思いきや、少年は踵を返し、立ち去って行く。
そのあっさりした行動から、少年が殺人を犯すのは今に始まった事なのではない、という事実を物語っていた。
路上に男――もう一死体と化した――がとり残されてから数分経ち、少年は再び戻って来た。手には大きな石を持っている。
「僕の望む答えも出せない低能な頭など――要らない」
そう言うと少年は男の頭に石をぱっ、と落とした。
落ちて行く石。当然の如くそれは男の顔面に直撃し、更に血が飛び散る。
それを、何度も繰り返す。
玩具を壊す子供のように。
八つ当たりする愚か者のように。
何度も、何度も――
「然様(さよう)なら、愚か人間(モノ)」
少年はそれだけ呟くと、その場を去った。
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