120人が本棚に入れています
本棚に追加
悲鳴のような私の声は、夢とは違い夕子と萩本に聞こえたのか二人は私を見た。
(私、このままはいや!!)
「その願い、叶えてあげる」
その言葉とともに、黒い塊は私の中へと溶けるように入っていった―――
「夜子!」
「桂木?!」
夕子と萩本くんの二人は急いで私のもとに駆け寄ってくると、私は光を映さない黒い眼差しで夕子を見た。
「夕子…お願いがあるの」
「な、なに?」
夕子が私じゃないものを見るように、目を丸くして見つめている。
「私ね、夕子と交換したいの」
クスクスと笑って、夕子の腕を掴んだ。
「痛い!夜子、離して!」
夕子が痛みに声をあげる。
私は、その声が甘美に感じた。
「桂木!離してやれよ!!」
その声に引きずり戻されるように、私はハッと意識を取り戻した。
「ご、ごめん!」
「待てよ!」
「夜子!」
いたたまれず私はその場から逃げるように走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!