120人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り道で家に帰りたくないとトボトボ歩いていると、黒いものが私の体から出てきて真向かいに立った。
「願いを叶えてあげるかわりに、私の願いも叶えてほしいの」
「それはなに?」
私は決意した。
本当に叶えられるのか、試してみようと。
「死を…私に死をちょうだい」
「死を…あげる?」
「ええ」
ニッコリと微笑むかのように、彼女はそぶりを見せた。
全身黒いからわからないはずなのに、私は彼女がどういう表情をしているのかわかった。
だって、私と同じなんだもの。
憎い、けれど大好きな夕子の顔と一緒の私と―――
「大丈夫。その時は私がやるから。貴方は、貴方の体を貸してくれるだけでいい」
私は、その交換条件に頷いて黒い手と握手した。
家の前に着いてから、私はすぐに入らず家を見上げた。
「今日からここが私の家ね」
クスクスと笑うのは、私のなのか………私じゃないのか……
私はこの先、何があるのか
目を向けず、逃げていた。
最初のコメントを投稿しよう!