交換

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帰り道で家に帰りたくないとトボトボ歩いていると、黒いものが私の体から出てきて真向かいに立った。 「願いを叶えてあげるかわりに、私の願いも叶えてほしいの」 「それはなに?」 私は決意した。 本当に叶えられるのか、試してみようと。 「死を…私に死をちょうだい」 「死を…あげる?」 「ええ」 ニッコリと微笑むかのように、彼女はそぶりを見せた。 全身黒いからわからないはずなのに、私は彼女がどういう表情をしているのかわかった。 だって、私と同じなんだもの。 憎い、けれど大好きな夕子の顔と一緒の私と――― 「大丈夫。その時は私がやるから。貴方は、貴方の体を貸してくれるだけでいい」 私は、その交換条件に頷いて黒い手と握手した。 家の前に着いてから、私はすぐに入らず家を見上げた。 「今日からここが私の家ね」 クスクスと笑うのは、私のなのか………私じゃないのか…… 私はこの先、何があるのか 目を向けず、逃げていた。
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