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「ただいまー!」
家のなかに夕子の声が響いた。
私は髪をとかしていた手を止めた。
カタリとブラシを置くと、どんどん瞳が焦茶色から黒へと変わっていく。
「夜子、ただいま」
扉を開けた夕子が私へと近寄ってきた。
「おかえり」
微笑むと、緊張していた夕子の体から力が抜けた。
「今日何かあったの?」
「ううん、なんでもないの。ごめんね」
いま、体を動かしてるのは私じゃないの。
ごめんね。
私は涙を流した。
でも、いまは私じゃないから…その涙は夕子に見えることはなかった。
「そっか。あのね、明日から元に戻るのやめにしない?夜子、髪を結んでる方が似合うよ」
夕子の言葉が私の胸へと刺さる。
「うん。わかった。」
「私、へんじゃない?」
夕子の言葉に胸がザワザワした。
「へんってなにが?」
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