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「髪結んでる方がいいのかなって…」
夕子らしくない表情で、私は私を一瞬だけ取り戻した。
「そんなことないよ?」
私は、どうしていつも選択を間違えるのだろう…
「そっか、ならいいんだ。彼方くんもこっちが似合うって言ったしね。」
「彼方…くん?」
昨日まで萩本くんって言っていたのに……
ゴトリ……私の顔が落ちる音がした。
でも、それは私の幻聴……幻で―――
(あれは、夕子?)
私は、ないはずの首に手を伸ばした。
夕子、綺麗よ…
血が流れる首を持って、黒い瞳の私が頬を寄せる。
(だめ…こんなの私じゃない!)
手が、隠している包丁に伸びた。
触れたら気持ちいいくらい冷たかった。
「夜子?」
夕子の指先が触れたとき、私は交換の条件を差し出すこととなった。
ピッと鋭い音とともに血が床を染めた。
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