オルゴールの音

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「ワタシハ…ゴダイサンヲサガシテココデシンダノ…」 扉を開けた先には、まだ骸骨になりきれていないショーンの亡骸が壁に寄りかかるように座っていた。 「ヤシキノヒトミンナコロシタ…ワタシハゴダイサンスキダッタ。ダカラカレヲコロシタカノジョモ、ズットクルシミニキヅイテアゲラレナカッタカゾクモユルセナカッタ。ゴダイサンハワタシニヨクハナシテクレタ。」 ショーンは自分の亡骸の横に立つと喋り続けた。 この屋敷の主人の吾大が、妻への愛情を無くしていたこと。 愛する娘を勘当してしまったこと。 家の資産がもう長く続かないこと。 誰にも話せなかったことだった。 それを彼に、ショーンにだけ話していた。 切ない…誰も報われることのない思いの輪廻は回っていた。 鳩子はお金、ショーンへの気持ち 兄は、この家を継ぐ人 凉子は、愛する主人への憎しみ ショーンは…愛する人を救えなかった そして何より館の主人は―――― 家を守れなかった。 家族を守れなかった。 その思いがこの館の時の狭間へと追いやった。
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