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「夜子、夕子帰ってるの?」
母が扉を叩く音で目が覚めた。
「私…どうしたの?」
夕子の血まみれの姿はどこにもなかった。
それどころか床も、私の手すら血の痕跡がなかった。
私はベットから降りると、扉を開けた。
「お…」
喉が痛くなった。
声が出ない。
(なんで?!)
「夕子…よね?」
母が私の姿を見て言った。
そういえば、私と夕子は今朝髪型を交換した。
私は髪を触るとおろしていた。
次の瞬間、私は手を見て疑った。
(ひっ――!!)
怖いはずなのに声が出なかった。
私の手は真っ黒なのに、母は疑いもしなかった。
「夕子?」
私は必死に声を出そうとしたら、頭のなかに笑い声が響いた。
「ママ、なあに?」
ニッコリと笑う私は、まるで夕子だった。
「帰ってきたら言いなさいよ。それより、夜子は?」
「知らないよ」
(そんな、私よ!お母さん!!)
声に出してるはずなのに、私の声は母に届くことはなかった。
「もうすぐ夕飯よ、降りてきなさい。」
「は~い」
扉を閉めると私の体から力が抜け、その場に座り込んだ。
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