交換

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「頭痛いの治したい?」 「っ?!」 私のすぐ後ろから声がした。 ドキリとして、恐る恐る後ろを見た。 「な、なに…」 震える声で、私は後ろにある黒い人形のような塊を指差した。 「私は貴方よ」 クスクスと笑って、黒い塊は私を指差した。 「私…?」 「そう、私は貴方」 「私じゃない!」 「違うわ。ほら…いいの?」 「な、なにが…」 「二人が一緒になってしまうわよ?」 彼女が指を指した先には、萩本くんの腕に腕を絡める夕子がいた。 途端に頭痛が酷さを増す。 「夕子が憎い?」 「違う…違う!」 「彼をとられるわよ」 「いや、いやぁ!」 頭のなかで硝子が破れる音がした。 「私と一緒になれば、彼も手に入れられるわよ」 私の手を黒い塊が握った。 「そう…私に身を委ねて」 「私はただ…」 「いいのよ、私が叶えてあげる」 私がね…… 私は、夢の中なのに、暗闇に包まれていくのを感じた。 物音がして目が覚めた。 「夕子?」 あれは、本当に夢だったのだろうか? 不思議な感じがした。 汗ばんだ手をじっと見つめると黒いものがゆらりと揺れたみたいになった。 目をゴシゴシとすると、いつものようになにもなかった。
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