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夕子は気付いて私の方を見た。
「おはよう、夜子。まだ寝てるの珍しいね」
夕子より早く起きるのがいつもだったから、それが珍しいのだろう。
「おはよう…つっ」
なぜか頭痛が治まらず、頭を抑えた。
声がする。
『いつも通りにしてて』
あらがえず声に従った。
「どうかした?」
機嫌よく髪をとかしていた夕子が髪をとかしていた腕を止めた。
「なんでもない…」
この時夕子に頭痛のことを言う気にはなれなかった。
「ねえ、夕子」
「なに?」
明るい夕子の返事に、私は何も言えなくなって…
「なんでもない」
それしか言えなかった。
「そう?」
本当は、交換をやめてほしいと言いたかったのに
私は、自分を憎み始めた―――
自分を殺したいくらいに、憎み始めた―――
あの黒い塊は、この願いも叶えてくれるのだろうか。
私は、鏡の前に座ると髪をとかした。
いつもは使わない髪ゴムを握った。
学校用にと、使わないのに買った黒いゴム。
今は、その存在すらも憎かった。
ギュッと一度握って、髪を結んだ。
鏡に映った私は、普段の夕子とうり二つだった。
「やっぱりそっくりね」
夕子が私の後ろに立っていた。
「本当にね」
私は肩に置かれた夕子の手を掴んだ。
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