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授業も何も頭に入らなかった。
放課後、誰もいない教室のなか明るい夕焼けだけが不気味なくらい私を照らす。
帰ろうと鞄を持って教室を出た。
廊下に出ると、今朝の夢が頭のなかに鮮明に思いだされる。
忘れたいのに鮮やかに覚えていて、私は小走りで下駄箱に向かった。
私は、背中から黒いものが滲み出ているのに気付く余裕もなかった…。
途中、教室の中から笑い声が聞こえる。
「この声…」
(夕子だ)
教室の扉は開いたままだった。
見たくないのに、足が何かに動かされるように、その扉の方へと歩みだす。
「いや…やめて」
(見たくない…見たくない、見たくないの!!)
「とられてもいいの?」
夢と同じように後ろからクスクスと笑いが混じる声がした。
「ほら」
私の後ろから、黒い腕が伸びてきた。
けれど、私は恐怖より指先に興味がいってしまった。
「いやぁ!!」
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