白百合と赤薔薇

2/2
前へ
/2ページ
次へ
    春の歌を歌っていたら。 小鳥達が寄って来た。 褒められて、なんだか顔が赤くなる。 皆さん一緒に歌いましょうか。 小鳥達のコーラスもかなり素敵。負けてしまいそうなぐらいに。 すると木の葉の陰に一羽。 「あら、貴方も歌いましょう。」 お誘いすると、周りの小鳥達ったら、口々に、 「あいつなんか放っとけばいい。」 そんな事を言うのよ。 あら、仲間はずれ? ぷくっと私の頬は膨れる。    さあ、お歌はもうおしまい。またいつか歌いましょう。皆さん、さようなら。     小鳥達は残念そうに見つめるけれど、後ろ姿を見せて帰るふり。 騙されてお空へ飛んでいく。   「降りてらっしゃい。」 木を見上げると、さっきの鳥さん。 微笑んで両手を広げると、ゆっくりと降りて来た。 胸に飾った赤い薔薇が目立つ。白い肌の美しい少年。    あの小鳥達は彼が妬ましかったのね。     「お歌はお好き?」 彼は照れたようで、そっぽを向いた。 私はほっぺをぱちんと挟んで目を覗く。 澄んだ銀の眼をしてる。 「とても綺麗な色ね。」 彼は顔を真っ赤にしてから泣いてしまった。 「ごめんなさい、痛かったかしら。」 ほっぺを撫でる。泣きやまないから抱きしめてあげると、深い真紅色した薔薇の香りがする。 頭の奥まで酔ってしまいそうな程。 「ありがとう。」 初めて聞いた彼の声。 涙のせいでしゃがれてしまってる。 その声じゃ、お歌は歌えないわね。 …白百合×赤薔薇 『出逢い』
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加