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──平成X年、六月──
キ~ンコ~ンカ~ン……ポーン!
「ふわっ?」
下校する時に、今夜は『学校へいGO!』観なきゃ、とか思うのも変だよね~。
なんて平和な事を考えていた私、早瀬由鳥の一時の平穏は、放課後のチャイムの最後のコーンと同時におでこにポーンと突撃して来たノートによって破られた。
「あ、ごめーん!手が滑ったっ!
見て見て由鳥ハカセ!お絵描き出来たのっ!」
嬉しそうに人のおでこにノートを投げつけてぴょんぴょんしてるのは出雲ひかり。
赤ちゃんみたいな笑顔の大きな瞳は、それこそ自分で描いたんじゃないの?ってくらいキラキラ。
「また授業中にこそこそこんなの描いてるう。ちゃんと勉強しないと知らないよ?
もう私達も中学二年生なんだから」
とは言いつつ、作品はちょっと期待して見る私。ボールペンで丁寧に仕上げられ、色鉛筆で彩色までしてある。
更に『ドォォン!!』の擬音付き。
おお、さすが漫画同好会のアイドル。
「後でまたペンで描くけど、良く出来たと思うんだっ」
アニメ声優みたいな羨ましい声で、羨ましいおっきな胸を張りながら言うひかり。
160センチの私より頭一つちっちゃい、小柄でショートカットのかわいい子。
でも、描いた物はあんまりかわいくない。
「これが伝説の『バク』ねえ……?」
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