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「ライム、あんまりいじめちゃダメだよ。
普通の人なんでしょ?」
しぶしぶお気に入りの赤いTシャツを着ながら呟くほのか。そのTシャツが『ブレザームーン』である事にはもう突っ込んであげない。
でも、自分が覗きの標的に……
むしろ、見なければ損である様な思考を招く状態である事実はわかっていないのだろうな。
「ああ。程々にね」
エアコン買えばいいのに……
そう思わずにはいられないが、経済事情も分かってはいる。とにかく悪党退治の許可は得た。
いきなり退治するのもかわいそうかな。ちょっと悪戯してやろうか。
よし、ほんの少しだけいい思いをさせてやろう。サービスサービス。
私は窓から外を向いたまま、Tシャツを胸の下までまくり上げてみせた。
き、き、キターーー!あああああああ!
どしぇぇえええーー!むひょひょ~~!
20メートル以上離れたアパートの一室。
虫唾が徒競走する程おぞましく意味不明な叫びが聞こえる。
くっ……やめておけば良かった。
後悔先に立たず、と言うが、余計なものを立たせてしまった様だ。
何故あんな不便そうなものが標準装備されているのだろう?扱いに困るだろうに。
私は身体を紫電と化して空を駆け、けだもの達の部屋へ真正面から音も無く飛び込む。
「いい夢見れた?」
光速で彼らの背後に降り立ち、高価であろう望遠機能の付いたカメラを、跡形も無く無慈悲に破壊する。
そしてもちろん、今見た物も記憶から抹消しなくてはならない。
さあ、ボルテージを上げて。
雷……
怒りの槌(つち)を叩き込む!
彼らを包む青白い光。
それが消える頃には、私はほのかの隣でテレビを観ていた。
私はほのかを守る為に有る。
雷を操り、この身も雷に変える正義と雷の化身、ライム。
自分で言いたくはないが、妖怪の様なものだ。
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