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『……ん?お前、なんで俺の部屋にいるんだ?』
『…………なんでだったっけ?』
二人のけだものは私達の記憶を無くし、壊れたカメラを嘆いている事だろう。
世の中には尊敬に価する男性もたくさん存在する。いつかあなた達もそうなりなさい、と願わずにはいられない。
まあ、この程度の小悪党ならどこにでもわいて出るもの。かわいくはないがかわいいものだ。
いくら平和な夢咲の街とは言え、のぞきや痴漢の類いは以前から現れた。
コソ泥、空き巣、置き引き。その程度ならたまたま気が迷った普通の人も手を染める可能性はあるだろう。
しかし。
ここ最近この街には、明らかに普通ではないモノが出没するのだ。
例えるならまるで、私の様な。
この街で今、何かが起きている。
人々は伝説の妖怪、バクの悪戯だなどと言っている様だが、そうではないのだ。
だが、如何なる存在が現れようと、私は彼女を守る為に有る。
私達は毎晩の様に、街に出没する邪悪なパルスを察知してはそれを追いかけているのだ。
逃げられてばかりではあるが……次こそ捕らえてやる。
「ライム、お疲れさま」
『ああ』
私とほのかは全てのサイズが同じだが、見る者に与える印象は正反対と言って良い。
腰まで伸びた黒髪、まん丸の瞳。いつでも笑みを絶やさない、のびのびと育ったお姫様の様なほのか。
金髪のショートで目がキツい私。
そんなお姫様は愛用のワインレッドの携帯のメールチェックをしながら
『あっ!アレ観なきゃ!』
などとはしゃいでいる。
【聖者】の文字の入った十字架のストラップが誇らしげに揺れている。
聖なる者、か。
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