立ち上がる聖者と従者

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ヒーローが大好きだったり、下着だけでテレビを観てたり。 そんな神々しい称号は、彼女にそぐわない気もするけど。 ほのかはチャンネルを『突撃!愉快社会魔界』に合わせた。 こういうのを好んで観る所も、ぜんぜん聖者っぽくないのだが。 さっきの連中が撒き散らしていたような、混沌としたパルスを浴びた後、彼女の笑顔はなんとも心が和む。 花のような笑顔、とはこういうものだろう。 また守ってあげたくなる。 その点では、聖者という呼び名は的を射ているかもしれない。 『こんばんは!延野ナオキです! 今夜は僕の故郷でもある、○○県夢咲市に来ています!』 ああ、夢咲にテレビが来るのは今夜だったか。 ……何も起こらなければ良いが。 「ほのか、直接見に行かないの? すぐそこで撮影をしていると言うのに」 「えーだって!延王寺とかお墓あるんだよお墓!恐いもん!」 …………。 『この街の伝説【バク】を、いつものメンバーで探しに行きます!』 すでに彼女は子供のようにテレビの前で微動だにしない。 「懐かしいなあ……延野ナオキって夢中(ユメチュー)の同級生なんだよね~」 この番組はだいたいタイトルから想像できるように、愉快な事件、社会や政治の話題、そして魔界……心霊スポットや心霊写真、怪奇現象などを、スタジオとロケ先を中継して放送する一時間のバラエティー。 延野ナオキは主に『魔界』担当。夏はこういうのがよく放送されるものだ。 ただしヤバい場所では真剣、ガセの時はコメディアンが暴れて笑わせてくれる。 幽霊が恐いほのかも、テレビで観る分には好きであるらしい。 聖者様とはかくも複雑なものなのか。 ああもう……私とした事が。 毎週観ているもので、こんな番組についても詳しくなってしまった。 恥ずかしい。 しかし。
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