プロローグ

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プロローグ

今年も町中に、桜の花が満開する季節になった。 「お母さん、弁当は?」 突然、可愛らしい制服を着た女の子が、私にそう尋ねてきた。 私は、慌てて彼女に弁当箱を手渡しながら、こう言った。 『まったく、自分で弁当ぐらい確認しなさいよ~。本当、いつまでたっても、お子ちゃまなんだから!』 私がそう言って呆れ顔をすると、私の可愛い一人娘が、ムッとした。 「お母さん、マジウザい!」 そう言うと、娘は私に背を向けて、怒りながら家を出て行った。 私は、慌てて家から飛び出すと、大声を張りあげた。 『行ってらっしゃ~い!勉強頑張ってね~!』 私が手を振ってそう言うと、娘が目を丸くして私を見た。 「もう!お母さん、恥ずかしいから止めてよ!馬鹿ッ!!!」 そう言うと、娘は逃げるように走り去ってしまった。 私にも、あんな年頃の時があったのに、今ではただの、おばさんだ。 私も、かつては娘と同じ18歳の頃があった。 18歳とは、大人達が思っているほど子供ではなく、18歳の子達が思っているほど、大人ではない微妙な年頃なのだ。 私が18歳の頃は、とにかく今の若者とは違って、本当に純粋な子が多かった。 その中でも、私達…いや私と私の親友達は、ずば抜けて最高にイカしていた。 私は、今こんな大都会に住んでいるけど、私の原点はいつだって、生まれ育ったあの故郷にあるのだ。 あの故郷で、18歳になった私と私の親友達は、泣いて笑って沢山ケンカして…。 少しずつ大人になっていった…。 私達の思い出は、必ず誰もが経験する、ほんの些細な事なのかもしれない。 でも、あの時18歳だった私達にしてみれば、些細な事ですら、重大な事のように感じたのだ。 すると、急に私の目の前に桜の花びら達が、ヒラヒラと飛び散ってきた。 私は、それと同時に目を閉じて、かつて18歳だったあの頃を思い出してみた。 すると、私の顔からシワが消え、周りの景色や空気がどんどんあの故郷に、変わっていくのが分かった。 目を開けると、あの懐かしい私の故郷が広がっていた。 私の名前は、紅葉(クレハ)。 今年で、やっと18歳になります。
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