天辺へ…

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「ねぇ、今日引っ越して来たんだよね!」 「うん」 「じゃあ、引っ越し祝いあげるね!」  天美がそういうと木から蜜柑の実が一つ、ゆっくりと落ちてきた。 「えっ……」  正平が唖然としているうちに、蜜柑の実が天美の手に吸い込まれていった。 「やっぱり驚いてるね! まぁそれが普通だけどね……」  少し間を空けて蜜柑を差し出しながら続けた。 「はい、これあげる! 食べるときっと良いことあるよ!」 「あ、ありがとう!」  そう言って正平は蜜柑を受け取った。 「ねぇ、天美って一体……」  疑問を投げ掛けた瞬間、周りの風景が歪み、気が付くと麓の鳥居の前に立っていた。 「あれ………?」  すると風のように吹き抜ける声が聞こえた。 「私は天美……この山の守り神……山頂の蜜柑の木に住まうモノ……」  とある晴れた日の昼下がり。不思議な山で、また一つ不思議なことが起こった。
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