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それからというもの、
僅かながら一部の部員達は気持ちを切り替えたようだった。
少しだけでも、朝練に来る人数も増えたのは嬉しい。
指導の声が朝から聞こえてくるというのは大きかった。
パチパチパチ…
拍手が鳴り響く中で、由紀が弓倒しした。
「やったじゃん!おめでとう」
退場してかけを外している由紀に、他の女子部員が声をかけた。
当の本人も、瞬きを繰り替えして実感が沸かないみたいだ。
どちらかと言えば、あまり嬉しくなさそうというか。
「嬉しくないの?」
俺は思わず聞いてしまった。
すると彼女は俯いて、こう言ってのけた。
「…納得のいく射は出来てませんでした」
その言葉を聞いて、思わず俺は口の端が持ち上った。
冷え込んだ11月下旬の事だった。
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