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「なぁ…もう何年経ってるんだろうな…」
背中に生えた黒い羽を波立たせると、美しい少年は呟いた。
「…さぁ…な…」
少年はため息を付くと、隣で街を静かに見下ろしている金髪の青年に視線を向けた。
高い時計台の上から見下ろすロンドンの町並みを二人は黙ってみつめていた。
「お前が変身して、今で半世紀くらいか?」
青年は、今はもう何も映さない綺麗な紅い瞳を細めた。
「…もう時間なんて意味はない…」
すると、少年はケラケラと笑い出した。
「…恨んでるのか?お前をそんな風に変えた悪魔が」
少年は無邪気に時計台の前を飛び回る。
「なんたって俺の親父だからなぁ!気まぐれにも困ったもんだぜっ」
青年はフワリと空中を歩くと、黒い羽を掴んだ。
「…昔の話はするな…それにお前の父親の話も…」
少年は笑うのをやめて青年をみつめた。
「…お前はもう笑わないのか?」
「フン…悪魔がそんなことを聞くとはお笑い愚さだな」
すると、少年は苛々として羽を掴まれていた手を振り払った。
「なんだよ…お前もこっちの住人のくせにっ」
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