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驚きとともに、少女はこれは一瞬夢の中の出来事ではないかと疑った。
あまりに、美しい青年。
月の光に髪が反射して今にも透けてみえそうな程輝いている。
瞳は…そこはかとなく深い闇を映した紅い色。
「…助けてやったのに、礼もなしか…?」
声は、聞いた途端に膝がガクガクと震えた。
まるで天使のように透き通っていて、それでいて魅力的な位官能的だ。
「まぁ…ここでお前の命も終りだが…」
一瞬の間、本当に瞬きをした間に相手の顔がすぐ目の前にあった。
「…っ!!」
するりと顎に指先が触れた。
ひんやりとして、変な汗が背中に流れた。
「助けてやった褒美をもらおうか…」
こんな至近距離から聞く声に、もう立っていられなくなり気づくと崩折れていた。
「…はぁ…は…」
青年がしゃがみこんだ瞬間、鼻孔に何とも言い難い芳香が広がった。
「…お前…」
青年にそう呼ばれ、瞳を上げた。
「青か…いや、それとも緑か?」
グイッと顎を持ち上げられ青年の瞳に囚われた。
「不思議な色の瞳だな…それに…」
青年の綺麗すぎる顔に笑みが広がった。
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