想う気持ち

6/17
前へ
/38ページ
次へ
 簡素な試着室に入り、ドキドキしながら着替える。  出来ることなら、この制服を来て、松木さんが通うこの高校で学びたい。  そんなことを考えながら試着室のドアを開けた瞬間だった。 「似合ってるよ、制服。はい、こっち向いて」 「えっ?」  かけられた声に反応して振り向くと、カシャッというシャッター音とともに、フラッシュが光った。  そして軽い笑い声が聞こえる。 「いい表情が撮れたよ。さっきの君の友達も可愛かったけど、君もいいね」  松木さんは笑顔だ。  別の人みたい。  あの雨の日の松木さんと……。 「あらっ、しずくちゃん? 制服にしたのね。似合ってるわよ」  ふいに話しかけられて、心臓がドキッとする。  美雪さんが戻って来ていた。隣には私服の若い男の人。  さっき美雪さんに声をかけていた人だ。  彼氏なのは間違いないみたい。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加