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長く何かを語る訳ではなく、でも的確に内容を伝えてくるような話し方。
心なしか、影のある笑顔。
私の鼓動は、少しずつ速くなる。
「じゃあ、俺は行くから」
えっ?
そんな、せっかく話せるチャンスなのに……!
「まっ、松木さん!」
思わず私は呼び止めていた。
一度は背を向けた私に、松木さんは振り返る。
「何?」
どうしよう。
呼び止めちゃったけど、何も考えてないっ!
でもここで何もなかったら、絶対変に思われる……!
「えっと、あの……」
私が必死になって考えていると、意外にも松木さんのほうから、話しかけて来た。
「空」
「え?」
「写真、見てくれてただろ?空の写真」
教室に張り出されていた空の写真のこと?
「はい。綺麗な写真でした」
私が素直に答えると、松木さんはほんのちょっと笑った。
「あれは俺が全部撮ったんだ。今も撮ってた」
……松木さん?
私と話しているのに、まるで違う誰かに語っているような。
どうしてだろう。
そんな感覚が消えない。
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