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松木さん……?
声に出して呼びかけたいのに、何故かそれが躊躇われた。
声をかけてはいけない気がした。
松木さん。
あなたは一体何を背負っているのですか?
知りたい。
でも聞けない。
私は黙って、松木さんの横顔を見ていることしか出来なかった。
◆
夜になり、私は部屋で今日起こったことを思い返していた。
バス停の君の名前は、松木さん。
写真部の部長さんで、中学の先輩だった。
空の写真、感じた違和感。
思い浮かぶのは、松木さんのことばかり。
自分でも何故ここまで彼が気になるのか、その答えが出せずにいた。
――コンコン。
ノックの音。
「お姉、ミキさんから電話」
かずさが子機を持って来た。
ミキちゃんから!?
……そうだ、ミキちゃんあれからどうしてたんだろう。
私は急いで子機を受け取る。
「ミキちゃん?」
『しずく…』
いつも元気で明るいミキちゃんの声ではなかった。
だいぶ泣いたのか、声が掠れている。
『ごめん、ケータイにかけたほうが良かった?』
「ううん、平気。話せるなら話して?」
『……うん……』
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