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『あたしね、克也さんが好きなの』
ミキちゃんは、ぽつぽつと話し始めた。
『今日一緒にいた人、彼女だよね。でも、それでも好きなの』
電話の向こうで、ミキちゃんは確かに泣いている。
私はそれに気付かないふりをした。そして、黙って聞くことしか出来なかった。
『克也さんがあたしのこと妹みたいにしか見てないのわかってる。なのに何で諦められないのかな……』
ミキちゃんは、真剣に恋をしているんだ。
そして苦しい思いをしている。
私も……。
私も同じなのかも知れない。
松木さんに向くこの感情。
苦しいくらい、松木さんのことが気になっている自分。
『しずく、ごめん。ありがと、聞いてくれて』
「ううん。また明日」
一通り話して少し落ち着いたのか、ミキちゃんは静かに電話を切った。
誰かを好きになること。
理由がいるのかな……。
私は松木さんのことを考えながら、眠りについた。
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