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私は少しほっとした。
ミキちゃんはきっと、ひとつ大人になったんだね。
そう思うと羨ましくもあった。
「しずく」
ミキちゃんは、真っすぐ私の目を見て言った。
「あたしは諦めるしかないけど、しずくには諦めてほしくない」
「え?」
「松木さん、だっけ。あの人のこと、好きなんでしょ?」
――ドキン。
胸が小さな音をたてる。
私が、松木さんを、好き?
正直それはまだ自分の中で、出ていない答えだった。
でも、こんなに気になるのも、色んなことを知りたいのも、それは、多分……。
今、はっきり思った。
これは、恋だ。
私は松木さんに、恋をしてるんだ。
「ね、しずく。あたしはしずくに、松木さんに想いを伝えてほしいの。行動を起こさなきゃ、何も始まんないよ」
ミキちゃんの言葉が、私の背中を押す。
「うん。私も、このままじゃ嫌だから」
「そーよっ! よく言った。しずく!」
私が今出来ること。
それは松木さんを知ることじゃない。
まずは私を知ってもらわなきゃ。
私の中に、小さいけど温かな勇気のカケラが生まれた瞬間だった。
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