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「あー……。呼んでみるけど、あまり期待しないほうがいいわよ」
「え?」
美雪さんの言葉に、一瞬身体が硬直する。
美雪さんの言葉の意味するところがわからない。
「ど、どうしてですか?」
聞く声が震える。
心臓が痛いほど鳴る。
美雪さんはひと呼吸間を置いて、私と目を合わせた。
「昨日の印象しかないと、嫌な思いをすることになるかも」
さらに美雪さんは続けた。
「いい人なんだけどね、本当は。……たまにふさぎ込むことがあるの」
ドキン、ドキン。
美雪さんのちょっと俯いた表情に、影が見えた。
まるで、松木さんが見せた笑顔のような。
一体、ふたりの間には何があるの?
それは、聞いてはいけないことなの……?
私の不安そうな表情に気付いたのか、美雪さんは慌てて笑顔を作ったように見えた。
「ごめんなさいね、変なこと言って。呼んで来るわね」
そう言うと、美雪さんは校舎の中へ消えていった。
残された私は、何も考えられずにいた。
出来れば、考えたくなかった。
良いことは浮かびそうになかったから。
ぽつっ……。
その時。
一粒の雫が、私の頬に当たった。
どうやら雨が降ってきたようだ。
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