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美雪さんは続ける。
「二人はいつも一緒で。良く晴れた日に、写真を撮りに行っていたわ」
写真を……?
私は、昨日の松木さんの言葉を思い出していた。
『空を撮ってた』
あの時の松木さんは、遠くを見つめていた。
でも、何故?
「ちょうど二年前。こんなふうに雨が降っていた日だったわ……」
美雪さんは、辛そうな表情で、語り始めた。
松木さんと、妹の美菜さんのことを。
◆
二年前――。
その日は朝から雨が降っていた。
時は放課後。
恋人同士が二人、バス停で話をしている。
『おい! 危ないぞ、傘さし運転なんて』
自転車に乗り、傘をさして走り出そうとする彼女を、彼氏が心配そうに見ている。
『だーいじょうぶだって! 慣れてるもん。ほら、バスが来たよ。乗って乗って!』
彼女に促され、彼氏は渋々バスに乗り込む。
ドアが閉まる直前、彼氏は彼女に声をかけた。
『バスが行ってから、気をつけて帰るんだぞ!』
『わかってるよー』
彼女は彼氏に手を降った後、バスの前方にまわった。
彼氏は彼女が心配で、バスの運転席付近まで移動した。
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