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「えっ……?」
私が驚いて聞き返すと、美雪さんは笑顔で話してくれた。
「気になる子が出来たんだって」
――ドキッ!
気になる子――?
「二週間前の雨の日。バス停にいたら、目の前を傘もささないで自転車を押してたおばあさんがいて。その時、自分をしばらく見ていた女の子が……」
あ……!
私の記憶が一気にフラッシュバックした。
◆
『おばあさん、この傘使って! そのままじゃ荷物も濡れちゃうでしょう? 自転車は私が押していきます』
『悪いわねぇ、急に降り出したものだから』
『いいんですよ、いきましょう』
◆
。そうだ、あの時、私……。
「しずくちゃん」
美雪さんの声が、私を現実に呼び戻す。
「その光景を見ていた松木くんの心の中で、美菜が囁いたような気がしたんだって」
美雪さんは窓の外を見ながら、その言葉を教えてくれた。
「『勇気を出すのにも、勇気がいるんだよ。わたしがその勇気のかけらをあげるから、勇気をだして。松木さん、前に進んで』――わが妹ながら、いいこと言うと思わない? しずくちゃん」
美雪さんは、柔らかく笑った。
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