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朱里は青年の手をつかんで河原の方へ引っぱる。
「こんな所があったのか」
二人は橋の下にある洞穴の中に入った。少し狭いが身を隠す位の広さはある。
「どこへ消えやがった」
「見逃してしまったか」
「逃げ足の速い奴だ」
「ちくしょう」
彼らは愚痴を吐きながら朱里達が隠れた所を通り過ぎ、橋を渡っていった。
しばらくして二人は外へ出た。
「とりあえず礼は言っておくぜ。ありがとうよ。4人が全員刀を抜いていたら危なかったかもな」
朱里はほっとしたようにうなずく。
「……お前、さっき俺の事を侍と言っていたな」
青年は彼女にじっと目を向け、口を開いた。彼は日に焼けて黒い顔をしているが、きりりとした切れ目でさっぱりとしている。どこか風流がある。
「どうしてそう思ったんだ」
軽く蹴った小石が川へ転げ落ちて小さな波紋を作る。
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