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はぁはぁはぁ…
はぁはぁはぁ…
部屋には激しい息遣いが響き渡っていた。
涼は…
痛みを堪えてるのか…
ベッドに横たわり顔を歪めていた。
拓翔
『涼…』
涼香
『…っく…拓…翔…』
拓翔
『…大丈夫か…?』
涼香
『……う……ん………。』
拓翔
『涼…。』
涼香
『た…くと……。』
拓翔
『ん…?』
涼香
『あ…りが…と…。』
涼はにっこりと微笑みを浮かべ、俺に感謝の気持ちを伝えてきた。
拓翔
『…おおきに。』
俺は、涼の頭を優しく撫でながら感謝の気持ちを伝えた。
中1の初冬の事やった…。
―今思えば…
あの時の『ありがとう』は…
真剣に愛情を注いだ事に対する礼やったのかも知れへん。
俺は今でも頑なにそう信じとる。
今日、街で涼香のお母さんに会った。
お母さんは俺に気付くと、気さくにも声を掛けてくれた。
脇には、3歳くらいやろか…
小さな女の子がお母さんの服を握り締めて立っていた。
優太さんの子供だという。
涼香が亡くなってから…
優太さんもかなり辛い思いをしてきたという。
それはみんな同じ事…。
涼香の葬儀の時…
滅多に泣かない優太さんが、人目も憚らず泣き叫んでいた。
その悲しみを乗り越え、
今やっと手にした幸せ…。
その女の子には…
涼香の分も幸せに…たくさんの愛情を貰い、与えながら育ってほしい…
そんな思いを込めて、『涼愛(すずあ)』という名前を付けたという。
涼の想いは…新しい生命と共に生き続けている。
…俺は家に帰った。
心奈
『拓ちゃん、お帰り💕』
拓翔
『ただいま。これ、頼まれてたやつや。』
心奈
『ありがと💕拓ちゃん、やっぱり優しいな💕』
拓翔
『…帰り、涼香のお母さんに会ったわ。』
心奈
『そうなんや…涼香さんの…』
拓翔
『あぁ…元気そやったわ。』
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