波平の死

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カツオは目の前の状況が信じられなかった。 和室の中心に弧をえがいて転がる波平の死体。腹にはナイフが刺さっていた。 耳元や死体に無造作に飛び回る蝿。死体の周りに広がる湖の様な赤茶色の血だまり。 鼻の奥まで届くアンモニアの様な刺激臭。 カツオの周りは警官や野次馬で溢れていたが、カツオ本人はまわりに人がいることさえ気付かなかった。 「君!そこをどきなさい!」 警官が叫んでいるがカツオの耳には届いていない。しかしその時なぜかカツオの耳に届いた言葉があった。 「思いだせ!今日の朝までのことを!」 これが聞こえた瞬間カツオは絶望と苦しみの淵の中でふと思った。 「誰が・・・殺したんだ」
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